人はいつまでも同じではいられない

管財課主。免罪体質では無いし色相美人でもない一般職員。宜野座と同じ法学部卒業。メンタルケア施設の立て篭り事件に巻き込まれ犯罪係数上昇。後に執行官。公安局キャリア研修所にはいたので狡噛や青柳とも仲は良い。学生の頃から宜野座が好きだけど他人の目とかもあって打ち明けてなかった。色々あって執行官になってからお付き合いしだす。

監視官と管財課

執行官、つまり潜在犯が居る刑事課は、それだけの事で忌み嫌われている。まあ私だって学生時代切磋琢磨した伸元が居なければ前を通るのも憚っていただろうからあんまり強くは言えないのだが、それにしても潜在犯が居るから壊れたキーボードの回収すらできないって些か軟弱過ぎやしないだろうか。

「あり、なんか機嫌悪いな」「…別に悪くないですよ」「わりーじゃん」そんな忌み嫌われている刑事課を管財課という職に就いてからというもの事ある事に出向いている。理由は明確、私以外誰も行かないからだ。おかげで執行官達とお喋りする仲にまでなってしまった。「あ、ギノ先生が今日非番だから?」

「…なんでそこで伸元が出てくるんですか」「だって好きっしょ、ギノ先生の事」まだ3回しか喋った事無かったはずの目の前の男に平然と意中の相手を当てられ返す言葉が出てこず狼狽える。「俺達執行官は他の課に嫌われてるのは皆承知の上だ。実際、あんたが来るまでは毎回人が変わってたからな。

でもあんたは毎回受け入れてここに来る。となるとここに来たい理由があるって事だ。で、見てたら狡噛よりかはギノ先生かなってな。どうよ」以前、慎也が佐々山は凄いと褒めていた事を今思い出す。なるほどこの観察眼、確かに優れたものをお持ちだ。だからこそ彼は執行官という職に適性が出たんだろう。

しかしここで、はいそうです、とは言えないし言うつもりもないので否定する。彼を騙し通せる演技力なんてものは私には持ち合わせていないから、意味のないことだと頭では理解しているが、精一杯仕事だからですと返して回収したキーボードを持ち、再び管財課へと足を進めたのである。

「今日パンツ何色?」「赤」佐々山さんの変態臭い口笛が鳴る。下着の色を聞いてきたりお尻触ってきたり最初こそこの人のセクハラにはどぎまぎしたが、今ではこうやって発注書を確認しながら返せるほどにはもう慣れた。絶対慣れていい事じゃないよなと思う。「だってギノ先生」「んなっ俺に振るな!」

「なんだよギノ先生が気になってそうだから聞いてやったんだろ」「んな訳あるか!」伸元がバンッと机を叩きながら立ち上がる。いつもの光景だ。こんな事毎回行われてたら今度は机を壊されそうだ、もうここに来るの私じゃない方がいいかとさえ思う。とは言え同期や上司に変わってくれと頼んでも

拒否され懇願されるのは目に見えているし、「黒が好きだもんなギノ先生」「あほか!」「白か?」「そ、そういう事じゃない!」「白だとよ」それにこういう情報を手に入れれるので、まあ来てやってもいい。しかし白か、持ってないから買いに行かなければ、なんて思いつつ一係を後にしたのである。

「7秒目合わせれたらセックスできるって知ってるか?」「…そういうしょうもない情報どこから手に入れるんですか」しかも朝から話す事か?それ。下着の色聞かれた方がまだマシである。「って事でちょっとこっち見ててくれ」「はぁ…」見つめ合うこと7秒。普通にできて笑えない。「面白くねえなこれ」

人を巻き込んでおいてできたら面白くないって失礼過ぎるだろ。「あ、ギノ先生。丁度いいところに」「?なんだ」用事も済んだので帰ろうとすれば伸元がお昼から帰ってきたらしい。なんてタイミングの悪い。「ちょっとこいつの目見てて」「…目?」明らかに怪訝そうに私を見てくる伸元を見つめ返す。

目綺麗だなとか顔整ってるなとか思っていれば「因みにこれ7秒続けれたらセックスできるんだと」と佐々山さん。「な、なん…っ佐々山!!!」佐々山さんが事の詳細を説明するや否や秒で目を逸らされた。体感3秒で伸元の顔は真っ赤だ。2人で言い争いをした後、そのまま伸元は自分の席に足を進め何やら

操作した。途端、抗議の声を出す佐々山さん。どうやら報復として追加の仕事を言い渡されたようだ。頭をかいた後、私にまたなと言い残し渋々デスクへと向かって行った。しかし良かった、あのままだと私が目を逸らす事になっていた。取り残された私は熱を持った顔を手で扇ぎながら1人安堵したのである。

10m先ぐらいでキレた伸元が、私の後ろに隠れる天利陽名を呼んでいる。また何か仕出かしたのだろう、呆れながら今度は何したんですかとノールックで問い掛ければ、宜野座さんのサボテンに栄養ドリンクかけたら怒っちゃいました、と。「……わざわざなんでそんな死にに行くような事を……?」

「元気になって欲しかったんです…」「いやあれ人間用だからね…」「はい…だから宜野座さんが元気になっちゃいました」いや誰が上手いこと言えと。しかも前半の言い方からして100%善意のつもりでやってるこれ。余計怖い。「…まあもうしませんって言ったら許してくれるよきっと」

そう、着々と此方に足を進める伸元を目で捉えながら話す。「なんでもう諦めてるんですか!?まだ私が逃げきれる可能性が…!」「いやだって…もう目の前にいるし」「うえっ!?」私に隠れてた天利さんにはどうやら伸元が近づいてきているのがどうやら分からなかったらしい。私の前で足を止めた伸元に

「…天利さん、サボテンが元気になって欲しい一心でやっちゃったみたいだからさ…。許してあげて」と伝えれば、うんうんと首を縦に必死に振る天利さんが視界に入る。暫しの沈黙の後、伸元が口を開いた。「……そうか。なら許す」え、マジで?伸元の言葉で安心したのかひょこっと出てくる天利さん。

「訳ないだろ」「やだあああ」そのまま伸元に首根っこ掴まれて1係に連れてかれる天利さんを見届ける。私はと言うと、せめてお説教の時間が短くなる様に心の中で手を合わせながら、2人とは反対方向に足を進めたのである。

標本事件後

「佐々山さんが…殉職…」なんだか刑事課が騒がしいなとは思っていた。それがまさか。「お前に言うことでも無いだろうが……あいつと仲が良かっただろう」私は所詮一般職員だ、事の詳細は分からない。でも目の前の伸元を見て分かる。多分佐々山さんは刑事として、無念の死だったんだろう。

手塚さんに八握さん、和久さんに昏田くんに花表さん。そして佐々山さん。人の、それも友人の死なんてこのシビュラが統治する世界で立て続けに起こるだなんて思ってもみなかった。居なくなってしまった彼らを思い出したからか、生暖かい雫が頬を伝う。目の前の彼は今にも泣きそうな顔を

しているのに泣かない。私より深く関わってきたはずだから泣きたいだろうに。監視官は泣く事すら許されないのだろうか。しょうがない、だったら監視官じゃない私が代わりに泣いておこう。「…ちょっとだけ、胸貸してね」「…ああ」空は快晴で、それにそぐわない私の嗚咽がそのまま何分も続く。

「……慎也は…監視官に戻れるの」「…無理だな、よくて執行官だ」「…っ」手塚さんや和久さんの事があるから監視官が安全だとは思っていない。でも、それでも圧倒的に執行官の方が死に近い。彼と別れた後、慎也も、そしていつか伸元も居なくなってしまうかもしれないという恐怖に侵され、その日は眠れなかった。

「なんっで!毎回毎回!何かしら壊すの!」トレーニングルームにて、慎也にぶち壊されたであろう格闘ロボットを回収しながら愚痴を零す。「知らん。俺に言わずあいつに直接言え」しかし返ってきたのは謝罪ではなく抗議の言葉。まあ謝罪を求める相手が違うと言われればそうなのだが。

「…ただの一般職員の私は執行官に連絡とかできないんだけど」あからさまに失言をしたという顔をする宜野座を一瞥し、付け加えて話す。「…現場に出てない私が言えたことじゃないけど公安とは言え限度がある。物は大事にして」「……言っておく」言った矢先その数日後デバイス壊されてブチ切れる。

執行官と管財課

「伸元変わったね」「…昔と違って抗う物が無くなったからな」変わりもする、と伏せて続ける彼を見れば犯罪係数の事を言っているのだと言うことは明確だった。それでも吹っ切れた彼は私の目にはどこか綺麗に見えて。私もそっち側に行きたい、なんて言ってもまだ彼は叱ってくれるのだろうか。

メンタルケア施設でのサイコハザードの時。目の前で繰り広げられる残虐な光景に耐えられなく裏から逃げようとする管財課主。「こ、ないで……っこないでっ」「っ落ち着け、俺だ」「ぁ…ぃや……」1番好きな人が目の前にいるのに目に入るのは冷えきった目をして銃を構える知らない人で。

数秒後、不意に視界が暗闇に落とされる。「執行官!どきなさい」訳も分からない状態だったがその言葉で今私は彼に抱き締められているんだと気づいた。「彼女は巻き込まれただけだ!殺す必要は無い!」「チッどいつもこいつも」暗闇の中で唯一伸元の声だけが鮮明に聞こえてくる。「…安心しろ」

「お前だけは絶対に殺させない」さっきまでの恐怖が無くなった訳じゃないし、暴行された事実が無くなったわけではない。それでも混乱した頭を元に戻すには十分すぎる言葉だった。「…それ、執行官じゃカッコつかないよ」「ハハ参ったな」彼の背中に手を伸ばす。私を撃ってください、という意味も込めて。

追いかける宜野座のサポートを霜月に頼む朱ちゃん。「……美佳ちゃんお願い。できるだけ、彼女を殺さないで」「…それはシビュラが決めることです」2人が両片思いなのは朱ちゃんだけ気付いてる。

執行官と外務省と潜在犯

「すまない」彼が面会に来て早々私に向けて発したのは謝罪の言葉だった。「俺がもっと早く現場に着いていれば」そう言って自責の念を吐露する彼に対して頭を横に振るう。「あの場で拘束された時点で犯罪係数は上がってた。濁ったのは伸元のせいじゃないし、私が今ここに居るのも伸元のせいじゃない」

「あの時私の犯罪係数は300を越してた…それなのに庇ってくれた。私は伸元に感謝する事はあれど恨むなんて事は絶対無いんだよ」そう言えば困った様な顔をし、また来ると言って帰る宜野座。朱ちゃんにお願いして月1で面会に来るけど外務省に転属してからは週1で来る。

「単身でSEAUnに行く!?」隔離施設での面会中だと言うのに驚きのあまり大きい声を出してしまった。慌てて口を塞ぐ。「日本と違って海外は紛争状態…危ないよ」せめて執行官、伸元でも連れて、と言おうとすれば「局長に言ったんですけど断られちゃいました」と困った様に笑う朱ちゃん。

こんな可愛い子を1人で外に放り出すだなんて何を考えてるんだあの局長は。「というかなんでまたSEAUnなんかに…」「…狡噛さんが見つかりました」「……!?」今度は驚きのあまり声が出なかった。人間というのは面白いものである。ってそうじゃない。「慎也を…連れ戻す為に…?」「いえ、別件です」

「詳細は…ちょっと言えないんですけど」それはそうだ。今の私は収容されている身だし、そもそも元々公安の人間ですらない。ただ、慎也がそこに居る可能性があるのであれば1つだけお願いがある。「朱ちゃん、1つお願いしていい?」「?はい」「慎也に会ったら3発ぶん殴っておいてほしい」

驚いたような顔をした後、一拍置いてくすくす笑い出す朱ちゃん。「す、すみません、宜野座さんより殴る回数多くて笑っちゃいました」「え」一呼吸した後、宜野座さんにも伝えたんですけど、と続けて、見つけたら必ず連れて帰ってくるのでここから出たら殴ってください、と目を合わせて言われる。

ここから出る、というのはほぼ無理に等しいのだが、それでも彼女はあえてそれを言葉にした。その言葉から本来なら執行されるであろう彼を私が出るまで殺させないという意志を受け取る。「…うん、そうだね、そうする。だったら5発にしてやる」なんて笑って見せれば、彼女もそれに合わせて笑ってくれたのである。

「ギノは元気か」「あの後執行官ですよ」「…そうか。…あいつは?」「…今は更生施設に」「…なんだって?」宜野座さんの事は想定内だったんだろう。だが彼女の事は想定外だったらしい。前を歩く彼は潜在犯となってしまった彼女の話に足を止め、こちらを向いた。続けて彼女が巻き込まれた事件の詳細を

狡噛さんに話せば、煙草を咥えた狡噛さんが深く息を吸って紫煙を吐く。「なあ監視官…いや常守」「はい」「あいつらの事、宜しく頼む。俺が言うのもおかしな話だが、あの2人には…まあなんというか幸せになって欲しいと思ってるんだ」「私も…そう思ってます」狡噛と朱ちゃんのSEAUnでの会話。

「…外務省って暇なの?」「まさか」「だよねぇ…」だとしたらこの面会の多さはなんなんだ、毎週土曜日に必ず来るぞと心の中で思う。僅か数分の為に来てもらうのは申し訳ないのでそんなに頻繁に来なくていいよと告げれば。「顔が見たいから来てるんだ」すみません、こんなたらしに育てたの一体誰ですか。

外務省と執行官

2人と違って最終スコアは中の上。だからこそそこそこの職に適正が出て、そこそこの仕事をしていた訳だ。だから正直、執行官なんてものになる日が来るだなんて思ってもみなかった。「……分かりました、なります。執行官」あなたが見た景色を、私が見れるというのなら甘んじて受けようじゃないか。

「……っ何考えてるんだ!」数週間後に執行官になる、と隔離施設での面会中に言えば椅子から立ち上がって怒号をあげられた。こんな大声を聞いたのは彼が監視官の時以来な気がする。「監視官とは訳が違うんだぞ」「……分かってるよ、慎也も伸元も執行官だったでしょ」「いいや分かってない」

今からでも霜月に、とデバイスに手を伸ばす宜野座に制止の声をかける。「心配しないで、適正が出たんだから大丈夫」成しうる者が為すべきを為す、でしょう、そう伝えれば彼はそれ以上何も言っては来なくなった。言いたい事は山ほどあるが飲み込んでいる、といった感じだ。

「…監視官、伸元みたいに怖くないといいな」「俺より怖い監視官にあたって辞めてくれるのが1番なんだがな」「まだそういう事言う」これだけ心配されて気持ちが分からない私ではない。ここから出たら彼に好きだと伝えてみようか、と考えた後、なんだか遺言みたくなりそうでつい笑ってしまった。

お付き合い始めました

「伸元の身長って183cmだよね?」「ああ、最後に測った時はそうだったな」「それってね、自販機と同じ身長なんだよ。知ってた?」「自販機」だからね、自販機で飲み物買おうとする度伸元の事思い出すんだよとけらけら笑う彼女。恋人に自分を思い出して貰えるのは喜ばしい事だけれど少々複雑な宜野座。

「お疲れ様」私の部屋にやってきた彼のネクタイを解くのを私がやりたがるから任せてくれるんだけど、どっちかと言うとやりやすいように屈んでくれる伸元を見るのが好き。「ん」って言いながら前のめりになってくれる。はい最高。しかも顔が強い上になんかいい匂いがする。「くっ顔がいい…」

「伸元変わったね」「またそれか」「いや前みたいな変わり方じゃなくて」座ってる彼の足の間に座って腰に回された腕を撫でる。「大人の余裕?みたいなのが出てきた」「そりゃまあ色々経験したからな」言いながら私の肩に顎をのせてくる。吐く息がこそばゆい。そういう雰囲気を出すのも上手くなった彼に

悲しいやら寂しいやら。「おじさんくさいよ」「もうおじさんだからな」「ふは、じゃあ私はおばさんだ」ゆっくり立ち上がって前から抱き着けば、視界が回転し俗に言うお姫様抱っこをしてくれる。「いや、お前は違うかな」「同い歳なのに」「女性は30からが綺麗と言われてる」

「それだと男性も30からがかっこいいって言われてるよ」なるほどそっか、だからかっこいいんだ、なんてそんな意味を成さないやり取りと思考に幸せを感じながら、彼に身を預け、目的地のその場所に着くまで瞼を閉じた。

やらかした。朝起きて思ったのはそれである。決して遅刻とかではない、時計はいつもの様に6時を指しているしそれにそもそも今日は非番なので関係ない。問題は隣で眠る彼である。言っておくが彼は私の恋人なので一夜の過ち、とかそういうものでは無い。では何が問題か。「…多分、寝落ちしたよなぁ…」

しかも恐らく可愛い寝落ちとかじゃない。散々疲れてるだろう、今日は寝ろと言われてたのに変な駄々を捏ねて半ば襲うように服をひん剥いた挙句の寝落ちだ。記憶が確かなら少々変態じみた発言も多々した気もする。「え、死にた…」「…?どうした」悶々としているといつの間にか伸元が起きていたらしい。

「お、おはよ…」「おはよう」「昨日は大変申し訳ございませんでした…」ああその事かという顔をした後、懇切丁寧に昨日の痴態を説明された。酔っていたわけではないので全部記憶に残っているのが尚辛い。果ては私の発言まで言おうとするので流石に手で口を塞ごうとすれば勢い余って押し倒してしまい、

昨日と全く同じ体勢になり、なんとも言えない空気になる。だがそれも数秒、あっという間に組み敷かれる。さすが外務省。「あ、の、優しくしてください…」「無理だな、俺は昨日からお預け食らってるんだ」「〜っ」煽るだけ煽って先に寝た報復として散々泣かされたのは言うまでもない。

さて、どうしようか。端的に言うと先程まで快楽を共にしていた彼が私の中で達した後、そのまま繋がった状態で私に身を預け眠ってしまったのである。正直私もこのまま眠ってしまいたいが、明日の朝苦労するのは目に見えているので起こさないよう起こさないよう慎重に体勢を変えようと試みる。「……嘘でしょ動かない」

ビクともしない、嘘だろ。諦めて手押しで彼だけ体勢を変える予定は変更し、繋がったまま私ごと体を回転させ俗に言う騎乗位の状態になる。「…この状態で起きられたら最悪すぎる…」そこから彼のものを引き抜こうとゆっくり腰を浮かせば彼の口から小さく吐息が漏れた。

幸いそれだけで起きることは無かったので無事抜けたが冷や汗がすごい。しかもまだコンドームの処理が残ってる。これはこのまま取っていいのだろうか、いつも手際が良すぎて覚えていない。とりあえず溜まった精子を下にやってから外し、結ぶ。いつもはまじまじと見ないのでなんとも思わなかったが、

外側が私の愛液でべたべたで恥ずかしかった。早々にゴムをティッシュで包んでゴミ箱にいれ、最後に人肌の温度に濡らしたタオルで軽く彼の全身を拭く。中心によれば気持ちよさそうな顔をするのがまた可愛い。とはいえここで寝込みを襲うほどの元気はないので彼に布団をかけた後、シャワーへと向かったのである。

「っ…」朝起きたら愛しい彼女の腕の中であった。お互い裸な上に目の前に乳房があってさすがに戦慄する。いつもなら彼女を抱き締めて寝るので、俺が寝落ちしたんだと理解するのに時間はかからなかった。どうやら何もかもさせてしまったらしい。お詫びに朝食でも作るか、と彼女の腕から離れベッドから足を下ろす。

朝食が出来上がった頃、匂いに釣られたのか彼女が起きてきた。「おはよ」「おはよう、…昨日はすまなかったな」「ん?ああ、全然。気持ちいいと寝ちゃうよねー。入ったまま寝ちゃったから抜くのに上にまで乗ったんだよ」と。おいちょっと待てバカ、俺が悪いのは分かってるが朝からそんな話をしてくれるな。

お風呂上がり、濡れたままの髪を放置してホットミルクを作っていると少し遠くから私の名前を呼ぶ声がした。目線をそちらに向ければ私が座るスペースを開けて床を叩く伸元。なんとまあ右左手ドライヤーを持ってくれているではないか。「え、乾かしてくれるの?」作っていたホットミルクを持って

不自然に空いた空間に座る。「ああ、痛かったら言ってくれ」「ん、お願いします」静かな部屋に心地よいドライヤーの音、暖かい風、時折地肌を擽る伸元の指、そんなもう寝てくださいと言わんばかりの環境が続く。0時をすぎ、睡魔に負けた私はそのまま身体を彼に預け深い眠りに入ったのであった。

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